派遣社員と社会保険、労働保険

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派遣スタッフも一定の条件を満たすと社会保険や労働保険に加入することができます。加入したい人だけがすればいいように聞こえるかもしれませんが、一定の条件に当てはまる場合には加入が義務づけられていると考えてください。

派遣会社は、派遣するスタッフが社会保険と労働保険に加入しているかどうかを派遣先に通知しなければならないことになっています(派遣法第35条)。派遣先はこれらの保険に加入しているスタッフを受け入れ、未加入の理由が適正でないと考えられる時には、カニュさせてから派遣するように求めることとされています。(派遣先が講ずべき措置に関する指針第2の8)。

以下、社会保険と労働保険の概要や加入条件などについて説明します。

社会保険

社会保険とは、健康保険と厚生年金保険を合わせた呼び方です。健康保険は病気やケガの治療に備える為の公的な医療保険、厚生年金保険は65歳からの年金給付や傷害を負った時の生活保障のための制度です。

結婚していて、配偶者の健康保険の被扶養者、国民年金の第3号被保険者になっている人でも、年収が103万円以上になると自分で社会保険に加入しなければなりません。

健康保険と厚生年金の保険料は、事業主(派遣会社)と労働者(派遣スタッフ)が半額ずつ負担することになっています。保険料率は雇用保険などと比べると高いので、会社の負担分を免れようとしてスタッフの加入をしぶる派遣会社もありますが、加入条件が整っているのに加入させないのは社会保険法に違反しています。

40歳以上の人は介護保険にも加入しなければなりません。介護保険の保険料は、健康保険の保険料に上乗せする形で給料から天引きされます。

加入条件

次の(1)(2)のいずれにも該当すれば、社会保険に加入できます。
(1)雇用期間が2ヶ月以上であること
(2)1日または1週間の労働時間、および1ヶ月の労働日数が、正社員(派遣先で同じような仕事をしている人)の4分の3以上であること

(1)は契約期間で判断されるので、実際に2ヶ月以上働いていないと加入できないという意味ではありません。派遣会社と雇用契約を結ぶ段階で、契約期間が2ヶ月以上あれば加入できます。契約期間が1ヶ月であっても、更新して2ヶ月以上働いていれば、あるいは働くことが確実なら条件に該当します。

(2)はおおむね週に30時間以上働くことになっていれば該当します。
「派遣されて2ヶ月以上しないと加入できません」とか、「社会保険に加入するなら時給をカットします」といった説明をする派遣会社がありますが、どちらも社会保険法違反です。おかしいと思ったら、社会保険事務所に相談してみましょう。

待機期間はどうなる?

雇用契約が終了しても、1ヶ月以内に同じ派遣会社で次の雇用契約が結ばれれば、すなわち同じ派遣会社から次の派遣先に就業すれば、社会保険を継続することができます。

しかし1ヶ月以内に次の仕事に就けなかった場合は、次の雇用契約が締結されないことが確実になった日、または1ヶ月を経過した日のうち、早い日をもって加入資格がなくなります。そこでこの場合は、市区町村役所で手続きをして、国民健康保険と国民年金に切り替えることになります。

あるいは「任意継続」といって、派遣会社にもうしでれば、待機中も健康保険と厚生年金保険の被保険者でいることができる制度もあります。ただし保険料は全額自己負担になるので、これまで派遣会社が負担していた分も自分で支払わなければなリません。

人材派遣健康保険組合(はけんけんぽ)とは

雇用契約結んでいる派遣会社が人材派遣健康保険組合(通称:はけんけんぽ)に加入していれば、待機期間中には「はけんけんぽ」の健康保険の任意継続制度を利用することができます。

これは、契約が終了して健康保険の被保険者資格がなくなり、任意継続する場合に、2ヶ月間まで通常より4割近く安い保険料で継続できるというもの。政府管掌の健康保険や他の健保組合にはない特例制度です。

 

この特例制度が利用できるのは健康保険のみで、厚生年金保険については従来通りの負担額になります。

ちなみに「はけんけんぽ」は、日本人材派遣協会の会員となっている派遣会社を中心に、2002年に設立された派遣スタッフ向けの健康保険組合です。同協会では現在、厚生年金保険についても、派遣スタッフの働き方に適した新たな制度をつくるべく、厚生労働省に働きかけを行っています。

労働保険

労働者災害補償保険(労災保険)と雇用保険を合わせて労働保険といいます。
労災保険は仕事中や通勤途中の自己によるケガの治療費、職業病に対する療養費を給付したり、仕事を休んでいる間の所得補償をする為の保険です。雇用保険は失業したとき、一定期間の失業給付によって求職活動しやすくするためのものです。

労災保険に加入するのは派遣会社

労働基準法では、業務上の事故や病気には雇用者が補償責任を負わなければならないとされています。労災保険はその補償責任を実効性のあるものにするためのものですから、派遣会社は必ず労災保険に加入していなければなりません。保険料は全額事業主負担なので、派遣会社が支払います。

派遣スタッフは、たとえ1日だけの就業で労災にあってしまった場合でも補償を受けられます。

労災保険の給付を受けるには、まず派遣会社に申し出ます。派遣会社が対応してくれない時は、スタッフ自身が直接、労働基準監督署に申請することができます。

加入条件

雇用保険の加入条件は次の(1)(2)をともにクリアしていることです。
(1)同じ派遣会社に1年以上引き続き来ようされることが見込まれること
(2)1週間の所定労働時間が20時間以上であること

(1)については、1年以上の長期契約だけでなく、短期の契約を更新して1年以上働く場合も該当します。

また次のようなケースでも、(1)の条件に当てはまるとされています。
・2ヶ月程度以上の就業を、1ヶ月程度以内の間をあけて繰り返すパターンで、通算して1年以上つづく見込みがある
・1ヶ月以内の就業を、数日以内の間をあけて繰り返すパターンで、通算して1年以上つづく見込みがある

どちらの場合も、派遣先は変わっていてもOKです。

雇用保険の加入条件は、実際に働いて1年以上たつかどうかではなく、雇用保険を結ぶ段階で契約期間が1年以上となっているか、または短期の契約の繰り返しパターンでも、派遣スタッフに1年以上働く意志があるかどうかで判断されます。

社会保険と雇用保険をセットにして、「2ヶ月以上働いてからでないと加入できません」などと説明する会社もあるようですが、両者は全く別の制度。セットでないと加入できないなんて事はありません。

加入条件を満たしているのに、派遣会社が加入手続きに応じてくれないときは、ハローワークに相談してみてください。

なお雇用保険の保険料は、派遣会社と派遣スタッフが一定率ずつ負担します。社会保険の保険料に比べると、それほど大きな負担にはなりません。

失業給付を受ける

これまで何度か契約して働いてきたのに、更新を打ち切られてしまった、契約が終了して、すぐに次の仕事が見つからない・・・。そんなときは、雇用保険に加入している期間が6ヶ月以上あれば、自宅近くのハローワークで受給手続きをすることにより、失業給付を受けることができます。

受給できるのは離職した日の翌日から1年間で、給付日数は離職の理由や雇用保険の加入期間によって90〜360日となっています。1年をすぎてしまうと、まだ給付日数が残っていても給付を打ち切られてしまいます。

給付金額は日額が残っていても給付を打ち切られてしまいます。

給付金額は日額で計算され、離職の直前6ヶ月間の賃金総額/180日)のおおむね50〜80%が「基本手当日額」となります。

受給手続きの際、気をつけたいことがふたつあります。

ひとつは、派遣で働いている人は必ず提出しなければならない。「労働者派遣終了証明書」という書類の書き方。この書類の「離職理由」の欄には次の4つの項目があります。
(1)今後、派遣就業しないため
(2)今後、被保険者となるような派遣就業をしないため
(3)最後の雇用契約期間の終了日から1ヶ月程度以内に次の派遣就業が開始しなかったため
(4)その他

このうち(3)を選択すると、ハローワークが「1ヶ月程度は里職業を発行せずに様子をみる」という判断をするため、結果的に派遣会社から離職票が受け取れる日も遅れてしまいます。

そこで(1)か(2)を選んで、早めに離職票を発行してもらえるようにします。(1)か(2)を選んでも、今後の働き方が制限されてしまうことはありません。

もう一つは、解雇など離職を余儀なくされた場合と、自己都合による離職とでは、受給申請してから支給対象となるまでの日数が変わってくるという点。会社の都合でやむなく離職した場合、受給申請して7日間の待機期間をへた翌日から支給対象となりますが、自己都合だと待機期間からさらに3ヶ月たった日の翌日から支給対象となります。

契約期間が終了して、次の仕事に就くまで失業給付を受けたいというケースでは、すぐに派遣会社に離職票を請求すると、労働を継続する意思を放棄したとみなされ、自己都合による離職として扱われます。このようなケースでは、すぐに手続きを開始せず、1ヶ月間は次の仕事を探します。それでも見つからない時に受給手続きをとるようにすれば、会社の都合による離職とみなされ、3ヶ月間の給付制限期間はなくなります。